「もう一度観たいあの映画」VOL.38 『続・激突!カージャック』
監督:スティーヴン・スピルバーグ 主演:ゴールデン・ホーン
【STORY】
テキサス州立刑務所に服役中の夫、クロヴィスのもとに面会に来たルー。ルーは裁判所の命令でまもなく2歳になる息子が里子に出されたと訴え、半ば強引に夫を脱獄させる。二人はパトロール中のスライド巡査を人質にしてなんとパトカーを強奪!愛する息子が保護されているシュガーランド目指してパトカーで逃走するが、そんな彼らの逃避行は、マスコミ報道合戦によって、テキサス全土を巻き込んだ大騒動へと発展していく。
【REVIEW】
スティーヴン・スピルバーグ監督が27歳で撮った劇場用映画デビュー作。「激突!」が初監督作品と思われがちですが、「激突!」は日本・ヨーロッパでは劇場公開されましたが、元はテレビ映画用の製作でアメリカでは劇場公開されていません。そして、ややこしいのが本作の邦題「続・激突!カージャック」(原題は「THE SUGERLANDEXPRESS」)。「激突!」のヒットを受け宣伝用に付けたタイトルだと思いますが、続編ではなく、内容も全く関係ありません。当時、「激突!」の続編と思って観た人は、かなり違和感を覚えたと思います。
本作は、主人公ルー(ゴールデン・ホーン)が福祉局を通じて養子に出されてしまった息子を取り戻したい一心で起こす事件で、1969年テキサスで起こった実話をもとにしています。ただ、その計画が行き当たりばったりで無茶苦茶なんです。まずはあと4か月で出所ができる服役中の夫に「息子を取り返せないなら離婚よ。」と脅して脱獄させ、刑務所に面会に来ていた老夫婦の車に乗り込み逃走、パトカーに追われるも逆に警察官を人質にしてパトカーを強奪、息子のいるシュガーランドに向かいます。
映画としては、退廃的というか破滅に向かっていくアメリカン・ニューシネマの流れがある一方で、シュガーランドまでの道のりで起こるルー、夫、警官3人のちょっとハートウォーミングなロードムービーの要素も含まれています。そして、本作をビリー・ワイルダー監督が「この作品の監督はこれから数年以内にすばらしい才能を発揮するようになるはずだ!」と当時絶賛しています。まさにこのコメント通りに、スピルバーグ監督はこのあと「ジョーズ」「未知との遭遇」…とその才能を開花していきますね。
この映画の翌年1975年に「JAWS ジョーズ」が公開されています。
◇『JAWS ジョーズ』
「JAWS ジョーズ」に続いて、1977年製作、日本では1978年に公開され大ヒット。
◇『未知との遭遇』
基本コメディ映画の出演が多いゴールデン・ホーン、この映画では製作総指揮も務めています。
◇『プライベート・ベンジャミン』
マスコミが事件を煽り、野次馬が集まったり、人質が犯人に協力的になるところはこの映画にもありました。こちらも実話がもとになっています。
◇『狼たちの午後』